憂鬱の科学

自民1強・安倍1強


 21世紀元年4月に演じられた自民党総裁選で最大派閥が戴く橋本龍太郎を抑え、奇しくも当選を果たした小泉純一郎総理の長期政権が自民党の寿命を随分長く引き延ばした。

 1994年に成立した政治改革関連三法案に拠って導入された小選挙区制に対して、日本社会党に絶大な影響力を揮った連合の山岸章会長は保守 vs.リベラルの構図における二大政党制の実現を望んだが、自民党を離党した小沢一郎衆議は保守陣営における二大政党制の実現を企図していた。

 小沢一郎は小選挙区制導入を成功させる為の弥縫策として日本社会党を与党に加えた政権交代を実現させたが、小選挙区制に拠る総選挙が施行された後、初めて実現した政権交代もまた旧社会党の流れを汲むリベラル系議員を多く擁した民主党によって果たされた。

 安倍総理曰く「悪夢のような民主党政権時代」を厭った有権者らは自民党政権の支持者を残して政治的絶望感を拡げ、投票を全く放棄するに至った。

 リクルート事件の発生で決定的となった有権者らの間に横溢する自民党政治への不信感を甚く憂慮し、自民党内に政治改革委員会を起ち上げ選挙制度の改革を図った後藤田正晴は、米ソ冷戦を背景とするイデオロギー対立の構図から生まれた55年体制の陋習を打破し、有権者らの国政への信頼回復を生涯最後の仕事と念じた。

 後藤田が自身没後の将来国政を真剣に憂慮し、自民党内で苦闘していた中を小選挙区制導入に反対した最も先鋭な議員が小泉純一郎であったことは実に歴史の皮肉である。

 小泉が小選挙区制導入に対して猛烈に反対した理由は党本部への権力集中を怖れたからであったが、清和会の領袖であった福田赴夫の書生から政治生活をスタートさせた小泉が福田と政権を争った田中角栄の流れを汲む派閥の絶大な力に抗って長年苦闘してきたことの表れであったと言えるものの、自身が総裁に当選し、長期政権を実現した後、出身派閥の清和会から総裁に就いた安倍晋三の政権において党本部の絶大な権力が政界の汚濁を生んでいることもまた歴史の皮肉と言える。

 細川連立政権が短命に終わり、鳩山・菅政権もまた短くし、愈々国政への絶望感を強くした多くの有権者らは投票する意志すら喪失するに至り、自民・公明両党支持者と労組員の外に投票者を見なくなった今日の国政を自民1強とするが、細川・鳩山政権が失敗した因を成すリベラル系議員を多く擁した政党を与党とする政権に対して多くの有権者らが不信感を堅くした所以である。

 而して自民1強は小沢一郎が二大政党制に求めた理想と違背する保守 vs.リベラルの構図にてリベラルの残骸を政権に包含することに起因し、保守政界において安倍1強に抗う勢力が潔く自民党を割る覚悟を決めなければならない歴史的使命を突き付けられている。

 小泉純一郎を当選させた2001年の総裁選は清和会出身の森喜朗内閣に対して剰りに低くした支持率を因としたものであったが、野党の提出する内閣不信任案への同調を以て倒閣を図った加藤の乱にて小泉は派閥を同じくする森喜朗に対して造反することなく、盟友・加藤紘一への合力を果たさなかった。

 斯くして、小泉は最大派閥が戴いた橋本龍太郎に敗れる覚悟で臨んだ総裁選の街頭演説で「自民党をぶっ壊す!」と吠えたのは、山崎拓元副総裁に拠ると総裁選後に自身や加藤とともに離党し、新党を築く肚積りであったからだったと云う。

 期せずして自民党を大いに延命させた小泉純一郎が若しあの総裁選で穏当に敗れていたならば、保守陣営における二大政党制の萌芽を得ていたかも知れない。

 小沢や鳩山らが果たした政権交代が儚くも挫折したのはリベラル勢力の残滓を多く混ぜていたからであり、今世紀元年に演じられた自民党総裁選で小泉純一郎が穏当に敗れていたならば、20年経った今頃、保守陣営における二大政党制を見ていたかも知れない。

 皮肉にも自民党を大きく延命させた小泉フィーバーは国民の国政に対する信頼回復が喚んだ天の声であったが、国政選挙においてすら半分の有権者らが投票を放棄するに至った今、故・後藤田が憂慮した国民の国政に対する不信感の増大をも更に越え、愈々政治に対する絶望から国政自体の紊乱を来し、国家そのものを危殆化させ始めている。

 安倍1強に因って愈々国民の国政に対する不信感が爆発せんとする今、保守陣営に身を置く志有る議員らが潔く離党し、自民党を二つに割り、小沢が求めた保守陣営における二大政党制の実現を図り、安倍1強に表れる国民の国政に対する絶望感を打破し、後藤田が求めた国民の国政への信頼を取り戻すことを渇望して已まない。

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  2. 2020/06/29(月)
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