憂鬱の科学

Die Luft der Freiheit weht.


 サンフランシスコより南東に凡そ60km、シリコンバレーの中心に位置するスタンフォード大学の名は日本人の間でも著聞するアメリカの大学だが、その校訓とする辞に目を剥く。

 "Die Luft der Freiheit weht."・・・アメリカの大学の校訓が何故かドイツ語で言われている。

 英訳すれば"The wind of freedom blows."で、日本で言えば大日本帝国憲法が発布されて間もない頃に開校されたとするアメリカの名門大学が何んでまた校訓をドイツ語で掲げるのだろうか・・・?

 スタンフォード大学の名で憶い起こすことは日本のバブル経済が弾ける直前の1990年にノーベル経済学賞を授与され、長らくビジネス・スクールの看板教授と謳われたウィリアム・シャープの学説だ。

 大戦後、米学界で拡がった企業財務の経済分析にて資本コストの考察は忽ち迷路に立ち入る解明を困難とした課題であったが、この難題に初めて光明をもたらした学説がシャープの資本資産評価理論であった。

 シャープの資本資産評価理論は実業界の経営者らに多く不満を与えるものとして言われるが、特定の株式上場銘柄の平均収益率が国債の流通利回りを超過する分、即ち特定の株式のリスク・プレミアムは上場されている総ての株式の時価総額を加重平均したものの平均収益率が国債の流通利回りを超過する金額に特定の銘柄の平均収益率と株式市場全体の収益率との共分散を株式市場全体の収益率の分散で割った値を乗じたものと結論づける。

 それで何が分かったかと申さば、どれほど株式市場で好調な株価水準の推移を遂げている銘柄とて、その投資効率は株式市場全体の投資効率を越えることはないことを教えたことだ。

 現代経済学の建設者の一人であったポール・サミュエルソンをシカゴ大学の大学院で指導に当たったウィーン学派のヨーゼフ・シュンペーターは世界史においてナチスが抬頭する頃までの経済学説にてレオン・ワルラスの学説が経済学研究において最も枢要な位置に在ると説いていたが、大戦後欧米の経済学界で主流を成したワルラス流の一般均衡分析が説く処を自分は学校を卒業してからも長らく理解できなかった。

 そうした処を初めて一般均衡分析の値打ちを悟らしめてくれた学説がウィリアム・シャープの資本資産評価理論であった。

 大戦後、米学界にて主流を成した一般均衡分析を史上初めて構想したレオン・ワルラスは社会思想において実に進歩的な考えを抱いていたと言われるが、カール・マルクスの著作が世界を席捲し始めた時代を生きたフランス人の学究の徒もまた一つの通貨流通圏において市場における競争が磨かせる資本の効率性も社会全体の効率性を越えることはないことを達観していたものと思われる。

 中国共産党にて習近平がイニシャティブを確実にした頃、世界的に右傾化の様相を濃くし始め、わが国では安倍さんが総理に就き、アメリカでも不動産王が大統領に選出された例を見たが、皮肉にも不動産王を大統領に選出した前回選挙にて米民主党候補を絞り込む過程で、ある意味でヒラリー・クリントンを敗退させたバーニー・サンダースは米政界では社会主義を標榜する稀な存在として夙に識られ、不動産王が今11月の大統領選で再選を図るに当たっても、米民主党はジョー・バイデンを正式な大統領候補と決定して猶、カリフォルニア州下の民主党支持者らの間ではバーニー・サンダースへの追慕を多々見受ける。

 米政界で異端視される政治家を自由の風が吹く加州では最も見識の優れた政治家であることを評価している。
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  2. 2020/09/26(土)
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